<はじめに> こんにちは。 当ビデオをお求めいただき有難うございます。 この第4巻は「音韻」をテーマとしてお届けいたします。 「音韻」とは手話の1つ1つの単語や表現の文をギュっと圧縮するようなものです。 例えば単語について言えば、「小」と「林」から成る小林という名前を現すような場合に ろう者の場合にはここに音韻変化が見られ、自然な表現のなかで「小林」となります。 また、「山」、「本」の場合のように聴者は1つ1つの単語として表しますが ろう者は「山」と「本」がくっつくように「山本」とこう表します。 文について言えば、単語で「私」「食事」「行く」というものがあった場合に 聴者は「私」、「食事」、「行く」と各単語を区切って表現します。 ろう者の場合はそう区切らず(音韻変化によって)「私+食事+行く」となります。 こういったことを音韻と言います。 この音韻変化は、収録した女性2人の会話(1人は東京生まれ、もう1人は 四国の愛媛生まれ)の中に見られます。 たくさん見受けられますので読み取れるかどうか試してみてください。 まず、二人の会話をご覧になっていただいたあと要所要所解説いたします。 では読み取ってください。 どうぞ。 <二人の会話のあと> 今の二人の会話は読み取れたでしょうか? この会話は服の買い物についてでしたよね。 服の話の後に口紅の話に移りました。ありましたよね? 口紅の話のときに、メガネの女性が相手から 「朝口紅をつけたけどいつの間にか取れちゃったの」と言われて 「あら、わかった。口紅が取れたのは・・」この先わかりました? 「キスしたからじゃないの」って言ってました。読み取れましたか? 「キスしたでしょ」「キス」って表現があったと思います。 「キスしたでしょ」 「違う。今日私は真面目に1日働いたのよ」と答えたにもかかわらず 「またぁ、キスの相手は誰なの?会社の中に浮気相手が居るんじゃないの?」 「浮気相手とベタベタしたんじゃないの」って冗談でからかってましたよね。 言われたほうは「違う、違う」っていう会話でしたね。 内容は読み取れたでしょうか? 会話というものはろう者でも聴者でも同じですが、 一方が話し終わってからもう一方が話し始めるというやりかたじゃないですよね。 同時に二人が話していることが多いですよね。 これが自然なコミュニケーションの方法です。 ろう者だとこの二人の会話を同時に読み取れますが、 聴者の場合は片方の会話を見終わってもう片方に目を移したときには すでに話が途中まで進んでいてついていけない場合があると思います。 なので少しはなれて同時に二人を読み取ることに慣れるのも必要ですね。 「キス」とか「浮気」とか話を読み取れない人もいるでしょうが、 音韻変化についての詳しい話はこの次のシーンで行います。 次は一人一人に話していただきますのでご覧下さい。 <1人目の話のあと> 今の女性の話、おわかりでしょうか? 今のお話はご自分の生い立ちでしたね。この中からいくつかお話いたします。 この女性が、東京で生まれて成長し石神井ろう学校を卒業したあと仕事について、 さらに結婚のために北海道に引っ越した、という話でしたでしょ。 「北海道北見の暮らしはすごく寒いでしょってよく言われる」という話のときに <みんな>+<いつも>+<寒い>+<言う>複数 という表現がありました。 これを普通に表してみると<寒い>+<言う>となります。 しかしこの話の中の表現は<言う>+<言う>+<言う>はたくさんの人が<言う>という 意味です。なのでこう表現します。 聴者の場合は<寒い>と<言う>は別の単語であり場所も別の位置となります。 ろう者の場合は音韻変化があり<寒い>の手の位置から<言う>の動作が続きます。 2つの単語がつながって表されるわけです。 こういう風に短く表せるのです。 「寒い?ってよく言われるけれども本当は以外に寒くない、 札幌のほうが遥かに寒く、北見はそれほどでもない」って言ってましたね。 「雪はそれほど多く積もるのではないが、太陽光が雪の表面に反射して暑い」 という話もでてきましたね。 これを単語単語で表せばこういう「暑い」の形ですが、この女性の場合には 音韻変化が生じていてこの表現になっているわけです。 音韻変化においては単語の連続性の他に手の形にも影響を与えます。 基本は「暑い」と表しますが、この場合には「暑い」の直前の手の形が影響してて (連続性の中で突然手の形を変えるのは不自然なので) このままの形で「暑い」を表しています。 こうするとスムーズな表現ができます。 なので音韻変化は形や場所の変化も含んでいるのです。 聴者はこの辺りの慣れがないために読めなかったり見落としたりが多くなるのでしょう。 音韻変化による形の変化に注意して慣れるよう心がけてください。 最後にもう1つ。 「仕事を探すため」というのがありましたが、普通ならこう表します。 この女性がこう表していたのは「仕事を探すため」ということです。 ここの<見る>+<ため>の部分に音韻変化が起りこんな表現になったわけです。 つぎは別の女性の話ですが音韻変化がたくさん見られますので がんばって読み取ってください。 ではどうぞ。 <2人目の話のあと> この話は読み取れましたか?難しかったでしょうか。 彼女のお話も先ほどと同じく、高等部を卒業し仕事に就いてからの体験談でした。 この中からいくつかピックアップしてご説明したいと思います。 説明の前にその部分を見ていただいてからお話します。 ご覧下さい。 [抜粋表現] 「16年間」。小中高の12年間と卒業後の松山市での仕事期間4年を合わせて16年間。 きちんと表すと「16」「年」「間」となりますが、表現の中ではこう表していました。 単語と単語が連続してます。読み取れましたか? 次はこれです。 [抜粋表現] この表現は何かというと仕事を見つけるということです。その後大阪に引っ越すとありましたが <仕事>+<見る>+<取る>は「仕事を見つける」ことです。 今の場合<仕事>の後に少し間がありましたがこの間には意味がありません。 仕事が見つかったので引っ越したということです。 次はこれです。 [抜粋表現] こういう表現でしたね。この中のこの表現は「短い」ということです。 これが音韻変化してこの表現となり「わずか2年で松山に帰る」という意味になります。 この部分のあらわし方は個人でまちまちでこのように色々な表現をとります。 次はこれです。 [抜粋表現] こういう表現ですが、間違えて「ダメ」と読み取る人もいるかもしれませんね。 ほんとうは<しばらく>の表現です。「帰ってのんびりした後仕事をする」ということです。 これが音韻変化でこうなります。本当はこういう表現ですがこれが短くなりこうなっています。 間違いやすいので注意してくださいね。 次はこれです。 [抜粋表現] この単語は聴者のみなさんは知らないかもしれませんが、こういう表現です。 意味はいろいろあって 失敗を繰り返さないように注意するといった場合にもこう表現します。 しかしこの例では「ふたたび」という意味です。 仕事に就いたけれども合わなかったのでふたたび帰るということでこう表していました。 「ふたたび」という意味ですね。 次はこれです。 [抜粋表現] こう表していましたが聴者のみなさんが読み取り間違えるのは<仕事>+<した>+<合わない> と勘違いすることです。仕事をしたけど合わなかったと間違える人は多いでしょう。 本当は<仕事>+<やっぱり>+<合わない>と表しているのです。 この例ではこのような形で表していますが<やっぱり>なのです。 次はこれです。 [抜粋表現] このような表現でしたよね。 「友達いっぱい」のあとに続くこの短い単語、これは何でしょうか? 「だんだん」という意味です。少しずつということですよね。 「だんだん東京になれる」という話です。 「だんだん」は本当に短い表現でしたが大切な意味のある表現ですね。 解説はこのくらいにします。 次にはこの話を1つ1つの単語に分割しています。 ご確認ください。 【手話企画開発部注記】 この部分の単語は話の中の意味に合った日本語を書いているのではなく 手話単語の1つ1つに割り当てたラベルと呼ばれるものです。 <>の中に記述している単語がそれです。 現在、このラベルは正式に統一されたものがありませんので当社でわかりやすさ を基準に割り当てています。 例えば、手話で「今日」と「今」は同じ表現を用いますが日本語に訳す場合には 「今日」「今」などとなります(ここのラベルは<現在>としています)。 しかし手話学習において同じ手話の形に対して1つの名称を割り当てた方が便利な 場合があります。 手話表現の中で手の形や場所が異なっているものを同じ手話単語なのかどうかを 認識させたい場合(ここでのような場合)がそうです。 さらに<引越し@><引越しA>のように同じ日本語に対応するために同じラベルを 使用したほうが分かりやすい場合は両者を区別するために数字の@Aを付けています。 指文字と指差は<>を付けずラベルと区別しています。 従いましてこの部分は以上をご理解の上ご覧ください。 <単語分割のあと> 今の単語分割をご覧になっていただいて、改めて見落しがあったことがお分かりだと 思います。 聴者は、ろう者の会話を読み取ったつもりになっているだけで、 改めて1つ1つチェックしてみるといかに見落としが多いかがわかると思います。 この見落としを確認しながら繰り返し見ていただきたいと思います。 今の単語は何だったのか1つ1つ確認してください。 音韻変化はかならず見られますので、その意味はなんなのか? どう表したのか?等学んでいただきたいと思います。 最初の会話や生い立ちの話の中に音韻変化がたくさん見られました。 ろう者の表現の中にはかならず音韻変化が見受けられますが、 その変化の割合は個人によってまちまちです。 変化の割合が少ない人もいれば多い人もいます。 私はどちらかと言えば少ないほうでしょうか。 その変化の割合の違いを例でお見せします。 「今日、朝ご飯を食べました」をいう文を変化の少ない表現をしてみればこうなります。 いいでしょうか。 変化の割合の多い場合はこうなります。あっというまです。 このように割合によって違いますので注意して読み取ってください。 次は、同じ人ですが、自分の経験談を披露していただきます。 最初の人は霊と出会った経験談、次は事故のお話しです。 ではご覧下さい。 <体験談のあと> さて今のお話は全部読み取れましたか? 実に音韻変化は色々とあるんだなと思いますよね。 最後に1つ気をつけていただきたいことをお話します。 音韻変化は先ほどお話したとおり単語と単語の連続性により発生しますが 手の形、場所、方向が変化として多く現れます。 しかし、この変化したものといままで習っていない知らない単語や聴者が使わない単語、 このような単語ですね(これは音韻変化したものでなく1つの手話単語です)、 この両者の区別がハッキリしないのではないでしょうか。 しかしそこはハッキリ区別する必要があります。 例えば先ほどの話の中の「暑い」もこの1つの単語だけ見てもなんだかわからないと 思います。 文の流れの中で、ここは音韻変化で手の形が変わったんだなと判断する必要があります。 基本はこの「暑い」という手話ですね。 かたや、「ふたたび」の手話はこちらなら判るでしょうけど前にでたこの表現の場合には 何かの音韻変化かな?と感じてしまうとすればそれは間違いです。 知らない単語なだけです。 その辺りはあやふやになりがちですが注意してください。 さて次回の第5巻は「数字練習帳」を予定しています。 前の「指文字練習帳」の数字版です。 みなさんご期待ください。 手話の勉強は色々と苦労もあると思いますががんばってください。 また、ろう者との交流も図ってください。 ではさようなら。